

「人手不足」ではなく「採用力不足」ではないか?
青森県に限らず、日本全国で人手不足が叫ばれています。しかし、それは本当に「働き手がいない」のか? それとも、「今まで通り安く使える人材が不足しているだけ」 なのか?あるいは、「若くて体力のある都合のいい労働力が確保できなくなっただけ」 なのか?まずは、その本質を見極めることが重要です。
特に、建設業、運輸業、小売業などの 「労働環境が過酷な業界」 ほど、人が集まらない傾向が強まっています。しかし、これを「少子高齢化のせい」「社会の変化のせい」と片付けてしまうのは短絡的です。実際には、業界の採用力が低いことこそが最大の問題ではないでしょうか。
「人手不足」なのではなく、「働きたいと思える環境」が不足している
まず、以下の点を整理して考える必要があります。
✅ 本当に働き手そのものがいないのか?
✅ 「安い賃金で都合よく働く人がいないだけ」ではないのか?
✅ 「若くて使いやすい人材だけを求めすぎていないか?」
特に、今の労働市場では、求職者が「どの業界で働くか」を選ぶ立場になっています。「仕事があるのに働き手がいない」のではなく、「その仕事を選びたくなる理由がない」 のが現実なのです。
たとえば、建設業では「厳しく育てるのが当たり前」「職人は怒鳴られて成長する」といった古い価値観が根強く残っています。しかし、その環境では 新しい人材が定着しないのは当然 です。運輸業では「長時間労働が前提」「休憩が取りにくい」といった問題が放置されており、小売業では「人手不足なのに営業時間を短縮できない」という矛盾が続いています。
業界側は、「人がいない」と嘆く前に、「なぜ働き手が集まらないのか?」を真剣に考え、変革する努力をすべきではないでしょうか。
「変革には痛みが伴う」—— しかし、それを避けては何も変わらない
多くの企業は「人手不足だから賃上げしよう」「労働時間を短縮しよう」といった**「小手先の対策」** を取ろうとします。しかし、それでは根本的な問題は解決しません。
本当に変革するためには、「業界の古い慣習」 を見直し、時代に合った働き方を導入する必要があります。
✅ 建設業の変革:「怒鳴って育てる文化」を捨て、「計画的な指導」にシフト
✅ 運輸業の変革:「長時間労働前提」から、「効率的な配送スケジュール」に転換
✅ 小売業の変革:「24時間営業・無駄な長時間勤務」から、「営業時間の最適化」へ
これらの変革は、最新のテクノロジーを導入する必要もなく、大きな投資を伴うわけでもありません。業界の「当たり前」を疑い、無駄な習慣を見直すだけで、驚くほど大きな変化を起こせるのです。
この人手不足は、「おいしいところ取り」では解決しない
ここで、重要なのは 「業界が変革するという痛みを受け入れる覚悟」 です。
多くの企業は、「給料は据え置き」「労働環境もそのまま」「でも若い人材は欲しい」と、都合のいい条件ばかりを求めています。しかし、それでは誰も集まらないのは当然です。
今後、本気で人材を確保したいのであれば、以下の3つのポイントを意識するべきでしょう。
1.「安く使いたい」発想を捨てる
長年の「コスト削減のために人件費を抑える」発想が、今の状況を招いています。適正な賃金を支払い、従業員が安心して働ける環境を整えなければ、人材不足は永久に解決しません。
2.「職場環境を見直す」ことで、労働負担を軽減する
長時間労働や精神的ストレスの多い職場では、人材が定着しません。
- 建設業なら「職人の教育システムを体系化」 し、経験の浅い人でも働きやすくする
- 運輸業なら「待機時間の短縮」 を進め、実労働時間を最適化する
- 小売業なら「営業時間短縮・効率的なシフト制」 を導入し、負担を減らす
3.「若者だけに頼る」考えを改め、多様な働き手を受け入れる
「若い人が来ない」という嘆きはよく聞きますが、そもそも若い労働力の母数が減っている のです。40代・50代の人材や、シニア世代、外国人労働者を含めた多様な採用戦略を考えなければなりません。
「慣習を変える」だけで、人材を確保できる企業が勝つ時代
人手不足を嘆いている企業と、いち早く変革を進めた企業とでは、今後の差はますます開いていくでしょう。
過去の産業変革を振り返ると、
✅ セブン-イレブンが「小売業の標準」を変えた
✅ ヤマト運輸が「個人向け物流の常識」を作った
✅ トヨタが「製造業の効率化の基準」を作った
といった事例があるように、業界の「当たり前」を塗り替えた企業が、最終的に市場の主導権を握りました。
今、人手不足に苦しんでいる業界でも、いち早く変わる企業が業界再編を主導し、遅れた企業は淘汰される未来が待っている でしょう。
変革の痛みを避けていては、未来はありません。人手不足は単なる「労働力の問題」ではなく、企業や業界がどこまで変革できるかの試金石 なのです。
企業が本気で変わる覚悟を持てるかどうか。それが、今後の人材確保と業界存続のカギを握ることになるでしょう。
深刻化する“人手不足”…青森県内の企業はより強く認識か 6割弱の企業が人手不足が原因で負の影響を感じていると回答(2025年3月3日掲載)|日テレNEWS NNN