「増えない給料」の真因と日本経済の停滞を生む構造(2025.2.26)

「増えない給料」の真因と日本経済の停滞を生む構造

「生産性が低いから給料が上がらない」という主張がよく聞かれるが、それはもはや言い訳に過ぎない。過去25年間で日本の生産性は約3割向上しているにもかかわらず、実質賃金はほぼ横ばいのままだ。問題の本質は、生産性ではなく「企業が儲けても労働者に還元しない構造」にある。

日本企業の利益剰余金は600兆円を超え、企業はかつてないほどの資金を抱え込んでいる。にもかかわらず、賃上げも設備投資も進まず、経済全体の活力が失われている。なぜ、企業は労働者への分配や投資を避け、内部留保を溜め込むのか? その理由を整理すると、以下の3点に集約される。


1. 企業の利益の使い道と、日本企業の最悪な選択

企業が得た利益の使い道は、大きく3つに分けられる。

  1. 労働分配(賃上げ・人的投資)
    • 給料を上げ、社員のスキルアップや教育に投資することで、企業の競争力を向上させる。
    • 賃上げは個人消費の活性化につながり、結果的に日本経済全体の底上げにつながる。
  2. 設備・研究投資
    • 新規事業への挑戦や設備拡張を行うことで、成長機会を生み出す。
    • 下請けや関連企業にも資金が流れ、経済全体の発展に貢献する。
  3. 内部留保(利益剰余金の蓄積)
    • 企業が資金をため込むだけで、成長にも労働環境の改善にもつながらない。
    • 企業は「将来のリスクに備える」と説明するが、実際には投資せずに現金を抱え込むことで経済の停滞を招いている

現在の日本企業は、最も悪い選択肢である「内部留保」を優先している。 これは、企業にとって「溜め込むことが最も得」な制度が続いているからだ。


2. なぜ企業は内部留保を選び続けるのか?

企業が賃上げや投資を避け、内部留保に固執する理由は次の3つにある。

① 企業にとって内部留保が最も「安全」な選択肢だから

  • 賃上げすれば、固定費(人件費)が増える。
  • 設備投資すれば、リスクが発生する。
  • しかし、内部留保として現金を持ち続ければ、企業のリスクは最小限で済む

特にバブル崩壊やリーマンショックを経験した日本企業は、「とにかく貯めておく」という経営戦略に固執し続けている。

② 政府が企業に厳しいルールを課さないから

  • 内部留保に課税する仕組みがなく、企業は溜め込むほど得をする状況が続いている。
  • 「賃上げ促進税制」などの施策はあるが、あくまでインセンティブ(優遇策)であり、企業にとって実行しなければならない強制力はない。

③ 政府が経団連の意向を優先するから

  • 政治資金の流れ
    • 経団連加盟企業は、自民党をはじめとする政党に多額の献金を行っている。
    • 企業の献金を受けている政治家は、企業に不利な政策(内部留保課税、労働分配の義務化など)を実行しにくい。
  • 選挙への影響
    • 経団連加盟企業は、従業員に対して政府支持を促すことが可能。
    • 企業がある地域では、自民党系候補が圧倒的に強く、選挙結果に大きく影響を与えている。

こうした背景から、日本政府は企業に対し、「内部留保を減らして賃上げや投資を増やせ」という強いメッセージを発することができない のが現状だ。


3. この状況を打破するには?

企業が「内部留保」を選び続ける限り、日本経済の成長は望めない。この悪循環を断ち切るためには、企業にとって「賃上げや投資をしない方が損」になる環境を作る必要がある。

✅ ① 内部留保への課税

  • 一定以上の内部留保を抱える企業に特別課税を実施
  • 企業がため込むほど税負担が増え、「投資や賃上げをしたほうが得」という状況を作る。

✅ ② 労働分配率の義務化

  • 一定以上の利益を出した企業には、最低限の労働分配率を義務付ける。
  • 例えば、「純利益の30%以上を賃上げや人的投資に回す」などの基準を設ける。

✅ ③ 企業補助金の条件変更

  • 補助金や助成金を「賃上げや設備投資を実施した企業のみ対象」にする。
  • 「賃上げしない企業には、政府の支援を受ける資格なし」と明確にすることで、企業に行動を促す。

✅ ④ 労働者の賃上げ要求を強化

  • 労働組合の権限強化
  • ストライキの法的保護 など、労働者が賃上げを要求しやすい環境を整える。

結論:企業を甘やかす政治を終わらせるべき時

この状況を変えるには、企業に甘い政治を終わらせるしかない。
現在の政府が経団連の意向を優先し続ける限り、日本の賃金は上がらず、経済の停滞は続く。

国民が選ぶべきなのは、「企業に対して強い規制を設け、内部留保を削減させる政府」 である。

しかし、選挙で企業寄りの政治家を支持し続ける限り、何も変わらない。
次の選挙は、日本経済が復活するか、衰退を続けるかの分岐点 となる。

「企業が利益を溜め込むほど得をする社会」を変えなければ、日本経済の未来はない。

生産性3割アップも「増えない給料」 原因は「貯めこむ大企業」にあった | TBS NEWS DIG

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