

モチベーション至上主義の限界と、システムで回る組織の強さ
「若年層の働きがいが低下している」という主張はよく聞く。しかし、本当にそうだろうか?
収入を求める人は役職を目指し、ワークライフバランスを重視する人は安定を選ぶ。これは時代が変わっても一貫している傾向だ。若者のモチベーションが下がったのではなく、働きがいの基準が多様化しただけではないか。
そもそも、仕事においてモチベーションに左右される人材ばかりが必要なのだろうか?
組織が成長し、事業が安定するためには、個々のモチベーションではなく、システムによる運営の最適化が重要になる。これを証明するのが、Amazonやトヨタ、マクドナルドのような企業だ。
モチベーションではなく、システムで事業を回す企業の特徴
企業が規模を拡大すればするほど、「属人的な業務」や「個人の裁量」に依存する経営は限界を迎える。
そこで、多くの成功企業は「モチベーションに依存しない仕組み」を構築している。以下に代表的な例を挙げる。
1. Amazon – データと自動化で物流を最適化
- 倉庫業務の多くがKivaロボットによって自動化され、作業員の個々の能力に依存しない。
- AWS(クラウド事業)も定額制で安定した収益を確保し、営業マンの個人的な努力に頼らないモデルを確立。
2. マクドナルド – マニュアルと役割分担の徹底
- 誰が働いても同じ品質のサービスを提供できるよう、細部までマニュアル化。
- 調理・接客・清掃と業務を明確に分け、属人的なスキルに頼らずに店舗を運営。
3. トヨタ – 「トヨタ生産方式」による仕組み化
- 「カイゼン(改善)」と「ジャストインタイム」を徹底し、現場の労働者の経験や勘に頼らず、品質を維持。
- 製造ラインに異常があれば即座に検知する「アンドン」システムで、誰が作業しても品質が一定に保たれる。
4. Uber – アルゴリズムで最適な配車を実現
- 乗客とドライバーのマッチング、価格設定、最適なルート選択をすべてシステムが管理。
- 個々のドライバーの営業力やモチベーションに依存しないため、安定した収益を確保。
5. Netflix – データを活用したコンテンツ制作
- 視聴履歴やユーザー嗜好を分析し、ヒット作を狙い撃ちする仕組みを構築。
- 人の直感ではなく、データを軸に事業を運営し、リスクを最小限に抑える。
「モチベーションが低い=ダメな組織」ではない
記事では、職場環境の「無菌化」が働きがいを奪っていると指摘しているが、**本質的な問題は「モチベーションの低下」ではなく、「適切な役割分担ができていないこと」**ではないだろうか。
- 収入を求める人は、競争が必要な環境で役職を目指すべき。
- ワークライフバランスを重視する人は、安定した役割の中で長期的に働けばいい。
企業はこの2つのグループを適切に配置することで、組織としての生産性を最大化できる。
しかし、もし全員に「高いモチベーション」を求めるなら、企業の仕組みそのものが機能しなくなる可能性がある。
システムで事業を回せば、個々のモチベーションは不要
成功する企業は、モチベーションに左右されない仕組みを構築し、**「誰が働いても一定の成果が出る状態」**を作ることに成功している。
- 人が増えれば増えるほど、組織はカオスになる。
- しかし、役割を明確にし、システムを整えれば、無駄な混乱を防ぎながら成長できる。
要するに、企業の成功は「モチベーションで回すか」「システムで回すか」の選択にかかっている。
モチベーションに頼る企業は短期的な成功しか望めないが、システムを構築した企業は持続的な成長が可能になる。
企業が考えるべきことは「モチベーション向上」ではない
「若者のモチベーションが低下した」という議論は、本質を捉えていない。
むしろ、企業が「個々のモチベーションを高める」のではなく、「事業が安定的に回る仕組みを作る」ことこそが重要なのではないか。
- モチベーションを高めても、属人的な業務が増えれば事業は不安定になる。
- しかし、システムを整備すれば、モチベーションの高低に関わらず事業は回る。
その上で、挑戦したい人には挑戦の機会を与え、安定を求める人には適切なポジションを用意すればよい。
結局のところ、企業が考えるべきは「働きがいの低下」ではなく、「いかに組織全体を機能させるか」なのではないだろうか。
https://diamond.jp/articles/-/359918