管理職の法律知識不足は、会社の人材不足を社外に晒す(2025.10.1)

第1章 「知らなかった」では済まされない時代へ

2025年現在、労務トラブルの多くは、管理職の「無知」が引き金となって発生しています。

例えば、生理休暇。これは労働基準法第68条で明確に規定された法定休暇であり、企業は請求された場合に拒否してはならない強行規定です。しかし、現場では「生理は病気じゃないだろ」「みんな我慢してるんだから休むな」といった発言がいまだに飛び交い、法を無視した運用が続いています。

重要なのは、こうした発言をした管理職本人だけでなく、その人物を現場に置いている会社自身も責任を問われかねないという点です。つまり、「知らなかった」ではもはや通用しない。これが現代のマネジメントに突き付けられた現実なのです。

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第2章 管理職の役割は“業務の適法性を担保すること”

管理職の仕事は、単に「業務を進める」ことではありません。その業務が法令に則って、適正に行われているかを管理することが本質的な責務です。
たとえば、

  • 労働時間が適正に記録されているか
  • 有給休暇が正しく与えられているか
  • ハラスメントや差別がないか
  • 法律で保障された休暇(生理休暇、産休、育休など)が適切に運用されているか

これらを現場レベルで確認・是正し、企業としての法令遵守を担保するのが、管理職に課せられた基本的かつ不可欠な役割です。
逆にいえば、法律を知らない状態で現場を管理すること自体が、すでに職責の放棄に等しいのです。


第3章 無知な管理職が引き起こす現場トラブル

現場で実際に起こっているトラブルには、以下のようなものがあります:

  • 生理休暇の申請に対して「それは甘えだ」と拒否 → 労基法違反
  • 有給休暇を「繁忙期だからダメ」と却下 → 違法行為
  • 残業代を「営業手当でカバーしてるから」と未払い → 未払賃金請求訴訟へ発展
  • 部下の時短勤務希望に対して「それなら正社員は無理」と発言 → 均等法違反+パワハラ

これらは、すべて「知識があれば防げた」トラブルです。にもかかわらず、管理職の70%以上が男性(2025年・パーソルキャリア調査)であり、かつ50代以上では「生理休暇は初耳」と答える者が未だに一定数存在します。

無知は組織の火種となります。 それは1人の上司の失言にとどまらず、企業全体のブランドや信用、法的責任をも巻き込む「経営リスク」なのです。


第4章 その責任、会社に跳ね返る

「それはあの部長が勝手に言ったことで……」
よく聞かれる企業の言い訳ですが、法的には通用しません。管理職の発言・判断は、会社の意思表示と見なされます。

使用者責任の具体例:

管理職の違法行為会社が問われる責任
生理休暇の拒否労基法違反(罰則付き)
ハラスメントの放置使用者責任+労災認定の可能性
有給の不正な不許可時季変更権の濫用 → 訴訟リスク
時間外労働の強制労働時間規制違反 → 是正勧告・社名公表の対象

さらに問題なのは、「教育も研修もせずに管理職に任命していた」となると、会社のガバナンスそのものが疑われ、企業風土への批判にもつながります。
さらに言えば、「このような人材を管理職に任命しているということは、適切な人材がいないのだな」と外部に示していることにもなるのです。


第5章 教育せずに任せる会社の怠慢

管理職の無知による違法対応が企業に損害を与えることは、ここまでで明らかです。ではなぜ、そのような事態が起きるのか。
答えはシンプルです。教育していないからです。
多くの企業が、昇格の条件として「部下のマネジメント経験」や「業績貢献度」は評価しても、労務に関する法的知識を確認することがないのです。昇格後に実施するケースはあります。しかしそれは、適正を見ずに昇格を決めているということ。無責任な任命と言わざるを得ないでしょう。

管理職教育の理想例:

  • 昇格前に労働法規を含むマネジメント基礎研修を実施
  • 定期的に法改正情報をアップデートするeラーニング
  • 生理休暇・ハラスメントなど具体事例に基づくケーススタディ

これらを怠ったまま管理職に任命することは、企業としてリスク管理を放棄しているのと同じ。むしろ「教育していないのに現場を任せた会社が悪い」と言われても反論できない時代なのです。


第6章 結論──“法を知らぬ管理職”は、企業の未来を壊す

管理職は、業務の進捗を追うだけの存在ではありません。

  • 適法な業務が行われているか
  • 法令違反が発生していないか
  • 社員の権利が保障されているか

これらを自らが理解し、現場で担保することができて初めて、真の意味で「管理」できていると言えます。
そして、そのための最低限の知識(特に労働法)を知らずにいる状態は、もはや「偶然」ではなく怠慢です。
さらに企業は、その管理職を任命した以上、「教育責任」を負う立場にあります。放置はもはや許されません。


知らなかった、では済まされない──。
それは、管理職に対しても、そして会社そのものに対しても、今や社会から突きつけられた問いなのです。


「生理は病気じゃない。甘えんな」こんな上司の発言は違法? 生理休暇を拒否された女性たちの悩み(弁護士ドットコムニュース