

そつのない人ばかり採用する企業は、なぜイノベーションを起こせないのか
転職面接で繰り返される「志望動機」「退職理由」「キャリアプラン」などの定番質問。これらのやりとりは、採用の現場で当たり前のように行われているが、そこには深刻な問題が潜んでいる。
それは、採用担当者の“思考停止”である。
これらの質問は一見、応募者の本質を知るための問いに見える。だが実際には、採用担当者自身が「なぜこの質問をするのか」を意識せず、形式的に繰り返しているケースが多い。形式的な質問に、模範解答的な回答が返されるだけの面接では、本質的なマッチングや人材の可能性は見えてこない。
また、企業側が「志望動機は当然聞くもの」「退職理由は必ず確認すべきもの」として、もはや形式的儀式のように捉えていることが、応募者にとっても“本音を語る余地のない場”へと変えてしまっている。ここにこそ、企業文化の限界が表れている。

採用は本来、企業の未来をつくる行為である
採用の目的は明確だ。
- 企業が事業を伸ばすため
- 組織を強化するため
- 課題を解決するため
つまり、「自社の未来を担う人材」を見極め、迎え入れることが本来の採用の意味である。
ところが、現在の多くの企業では、「なぜ採用するのか」という目的意識が希薄になっている。「今年も例年通り新卒を○名採用する」「人が辞めたからとりあえず補充する」──そうしたルーチン的発想が採用活動の前提になっている。
これは、採用が“目的”ではなく“習慣”になってしまっている証拠である。
そして、それは“考えなくても済む仕事”を再生産し続ける温床でもある。目的の明確でない採用は、目的のない仕事やポジションを社内に生む。そうして生まれるのは、企業全体の停滞である。
採用担当者の「失点しない姿勢」がすべてを曇らせる
採用現場では、「誰を採ったか」で責任を問われることはあっても、「誰を落としたか」で責任を問われることはほとんどない。だからこそ、採用担当者は本能的に「リスクを避ける採用」へと流れていく。
- 無難な受け答えをする人を選ぶ
- 応募者の“本音”より“空気を読む力”を重視する
- 「よくある質問」にそつなく答えられる人に安心感を覚える
このようにして、思考停止の質問と、正解を演じる応募者による“模範演技のマッチング”が成立してしまう。
企業は一見リスクの少ない人材を採ったつもりでも、その実、何の変化も起こさず、組織に新しい波を起こさない“静かな無風”を選んでいる。だが、それは果たして企業の未来を拓く選択と言えるだろうか?
採用活動が「人事のモラトリアム」と化す構造
企業が必要とするのは「自社を伸ばす人材」のはずだ。しかし実態は、「失敗の責任を問われない人材」を探す採用になっている。
これは、人事部門そのものが“モラトリアム”の中で動いている状態であるとも言える。
- 採用活動を行っていること自体が仕事になっている
- 実際の成果(定着・活躍)ではなく、採用数やプロセスの遂行が評価指標になっている
- 「前年踏襲」が慣例となり、改善や挑戦が避けられている
このような組織風土では、イノベーションを起こせる人材は決して入ってこない。
そしてこの「モラトリアム構造」は、企業のあらゆる意思決定を形骸化させていく。採用が“している感”だけで進められれば、他の業務もまた“やっている感”に支配され、企業全体が「中身のない順応性」で満たされていく。
正解を言う人ではなく、「問いを持つ人」を採る覚悟
変革とは、既存の枠組みを壊すことから始まる。だが今の採用現場では、その枠組みに従順な人だけが通過する構造になってしまっている。
企業にとって必要なのは、「正解を知っている人」ではなく、「問いを持っている人」である。
問いを持つ人は、摩擦を生むかもしれない。しかし、その摩擦こそが変化の契機であり、進化の糧になる。今の採用がそれを恐れてしまえば、未来を担う人材は永遠に門前払いされ続ける。
採用の本質とは、「誰が一番うまく演じられるか」を競う場ではない。採用こそが、組織にとっての最大の“問い”の場であり、採用担当者はそこに真摯でなければならない。
採用の本質に立ち返ることが、唯一の解決策
採用の思考停止を打破するには、まず「なぜ採用を行うのか」という原点に立ち返ることが必要だ。
- どのような課題を、どのような力で解決したいのか
- 今いるメンバーで足りないものは何か
- そのギャップを埋めるために、どのような資質・経験・視点を持つ人材が必要なのか
この問いを言語化しないまま「とりあえず採用」を続ければ、組織は徐々に均質化し、外部変化に適応できなくなる。
そつのない採用を捨て、未来を取り戻す
- そつのない人ばかりを採る
- 異質を排除する
- 摩擦を避ける
こうした採用姿勢が組織の硬直を招き、挑戦を阻害している。変革を求めるならば、そつのなさを捨てなければならない。
採用とは、未来への投資であり、変化の起点であるべきだ。「思考停止」ではなく、「思考の解放」を生む採用活動ができるかどうかが、企業の運命を分ける時代に入っている。
採用における問い直しこそが、組織の未来を変える
今、最も必要なのは「模範解答」ではなく、「誠実な問い」なのだ。問いを発する力を見抜くこと。それができる企業こそ、これからの時代に生き残り、変革を起こしていける組織となる。
それができない企業は、ゆっくりと死んでいく。
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