

リーダー不足の原因と対策|企業が今すぐ取り組むべき「リスクを引き受ける姿勢」
多くの日本企業が「リーダーがいない」「管理職候補が育たない」と悩んでいます。帝国データバンクの調査によると、実に67.8%もの企業がリーダー不足を実感しているという結果が出ています。しかし、なぜこれほどまでにリーダーが不足しているのでしょうか。
単に「人材がいない」「意欲が低い」と片付ける前に、企業自身が構造的な問題を抱えていることに気づかなければなりません。
リーダー不足の本質的な原因とは?
企業が見落としがちなリーダー不足の原因は、以下の3点に集約されます。
1. リーダーや管理職に求められる責任が重すぎる
- チームの成果だけでなく、部下の育成・評価・モチベーション管理まで担う
- 現場業務とマネジメントの両立を強いられる「プレイングマネージャー化」
- 経営層と現場の板挟みになり、矛盾する要請への対応を迫られる
2. リスクを取ったときのリターンが見合わない
- 管理職の報酬は役職手当が数万円上乗せされる程度
- 責任や業務量は激増する一方で、待遇が改善されない
- 失敗すれば評価低下・降格・リストラのリスクが現実になる
3. 日本社会特有の「失敗できない」風土
- 住宅ローンや教育費など、管理職世代は生活の重圧が大きい
- 失敗すれば、キャリアも生活も取り返しがつかなくなる
- そのため、無難な選択をする保守的な人材が増え、組織が硬直化する
アメリカとの違いは「セーフティネット」の有無
アメリカでは、たとえリーダーとして失敗しても
- スキルを評価する転職市場が機能
- 他社からの引き合いが常に存在
- 再挑戦が当たり前とされる文化
この環境があるからこそ、リーダーは挑戦的な判断ができるのです。
日本企業が今すぐ始めるべき「リーダー不足解消策」
1. リーダー・管理職に対する「思い切った待遇」を用意する
- 年功序列の延長ではなく、ジョブ型の報酬設計に移行する
- リーダーの役割やリスクに見合う報酬水準を整備
- 責任の重さに応じた正当な対価を与えることで、モチベーションを高める
2. 失敗してもチャレンジを称賛する文化をつくる
- 「失敗=評価低下」から「挑戦=評価」へ文化を転換
- 失敗事例をオープンにし、学びとして組織全体で共有
- トップが「挑戦は価値」と繰り返し発信し、実際に評価制度に反映する
3. 雇用の流動化を進め、「リスクを取ることが合理的」な環境を整える
- 社外でも通用するスキルを持つことで、「この会社で挑戦しやすくなる」
- 副業・兼業の解禁、他社との人材交流などで視野を広げる
- 「外にも活躍の場がある」ことが、社内挑戦の後押しになる
社員のリスクを引き受ける「企業の覚悟」が問われている
加賀電子は、社内起業制度を導入し、社員に新規事業への挑戦を促しています。
- 失敗しても、解雇や負債はなく、数年の限定的な減俸のみ
- 社員がリスクを恐れず挑戦し、再チャレンジの機会も用意されている
- 会社がリスクを引き受ける姿勢が、社員の挑戦意欲を高めています
これは、企業側が「社員のリスクを引き受ける覚悟」を持っている好例です。
企業がリスクを取れば、社員は挑戦できる
「リーダー不足」を嘆く前に、企業は自らが変わるべきです。
具体的には、
- リーダーに報いる待遇
- 失敗しても価値と認める文化
- 柔軟な雇用とキャリアの選択肢
これらを整備することで、社員が挑戦しやすい環境が生まれます。
結果として、リーダー人材が育ち、組織が活性化し、企業の競争力が高まる。
そして、その動きは日本経済の再成長にもつながるのです。
まとめ
リーダー不足の解決は、リーダー個人の意欲やスキルの問題ではありません。
企業が社員に挑戦を促し、リスクを取る環境を整備することが何より重要です。
これが、次世代リーダーを生み出し、日本の企業、そして経済を再び成長軌道に乗せるための鍵となるはずです。
企業の67.8%がリーダー人材不足を実感、育成する上での課題は? – ITmedia ビジネスオンライン