若手社員にどう接するべきか?管理職が果たすべき「役割」と「育成」の本質とは(2025.4.22)

1. はじめに──「どう接すればいいのか」と悩む管理職たちへ

「怒ればハラスメント」「放っておけば動かない」「迎合すれば舐められる」。 そんな不安を抱えながら、日々若手社員に向き合う管理職が増えています。

しかし、この状況は偶然ではありません。 世代間で育ってきた価値観や働き方が異なる中で、「かつての成功体験」は通用しにくくなり、従来の感覚で接してもうまくいかないのです。

だからといって、無理に“猫なで声”で接する必要はありません。 求められるのは、感情論でも、懐柔でもない。 「成果を出す組織」の中で、管理職が果たすべき役割を冷静に再定義することです。

このコラムでは、「管理職の役割」を軸に、若手社員との向き合い方、評価の基準、育成の方向性を深掘りしていきます。

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2. 管理職の本質とは──上司は「人間関係の潤滑剤」ではない

まず明確にしたいのは、管理職とは何者かという問いです。

それは、「部下と仲良くする人」でも、「現場の雰囲気を和ませる人」でもありません。 管理職の本質とは、「組織の目的を果たすために、人・時間・行動を整える役割」です。

管理職に求められる主要な機能は次の3つに集約されます:

  • 業務の目的・水準を明確に示すこと
  • 部下の行動や成果を評価し、是正・改善すること
  • 職場に必要な緊張感と推進力を維持すること

この3点が機能しない限り、どれだけ「優しい」上司であっても、組織として成果は出ません。


3. 若手社員を取り巻く“前提”の変化──「同じことをしても通じない」

上司が接しづらさを感じる最大の原因は、若手社員の価値観や学習スタイルの変化にあります。

現代の若手は、以下のような前提で育っています:

  • 過度な上下関係より、対等でオープンな関係性を重視
  • 「察する」より「言語化された説明」を重視
  • 自己防衛的かつコンプライアンス意識が高い

この背景を無視して「自分たちの頃は」と語っても、単なる“時代錯誤”として捉えられてしまいます。


4. 管理職がやってはいけない二大パターン

現場では以下のような“失敗する上司像”が見受けられます:

(1)接待型上司

  • 部下の機嫌を過剰に気にし、言うべきことを言えない
  • ハラスメントを恐れるあまり、問題に目をつぶる

(2)圧力型上司

  • 自分が苦労してきたからという理由で、再現させようとする
  • 「根性論」や「空気を読め」で動かそうとする

この背景には、以下の心理バイアスが作用しています:

  • サンクコスト効果:「自分が耐えた経験は意味がある」と思いたい
  • システム正当化理論:「昔からあるやり方は正しい」という思い込み

また、接待型の背景には「気を遣う」と「配慮する」の混同があります。相手を尊重する配慮と、ただ反応を恐れる気遣いはまったく別物です。


5. 適切な接し方──目的と基準に立ち返る

若手との接し方において、最も重要な原則はこれです:

「感情」ではなく「目的」と「基準」に立ち返って会話すること」

感情的に動いたり、個人的な好みや不快感で判断したりしてはいけません。

適切なマネジメントとは:

  • 何のための仕事か(目的)
  • どこまでやるべきか(基準)
  • なぜその行動が必要なのか(説明)

を明確に示し、必要な修正を加えることです。

若手との摩擦は、“考え方の違い”ではなく、目的と水準の共有不足から生じることが多いのです。


6. 部下の役割と「評価される人材」の条件

若手社員に求められる最低限の役割は、上司の指示に従い、責任を持って仕事を遂行することです。これは当然の前提であり、それだけでも組織においては重要な存在です。

しかし、そのうえで「評価されるべき人材」とは次のような人物です:

  • 上司の指示の意図まで汲み取り、補完できる
  • 目的に立ち返って自ら行動や手順を工夫できる
  • 違和感やリスクに気づき、報告・提案できる

「すべてを指示されないと動けない人」は、“誠実”ではあっても“優秀”ではない。

管理職は、その“違い”を見抜き、正しく評価する責任があります。そうでなければ、「評価されるべき人材」、優秀な人材の不満を生むリスクとなります。それは即ち、会社にとっての不利益となります。


7. 反発・不満・「ハラスメント」への対応

指導に対して感情的な反発や、「それってハラスメントですよね」という反応が返ってくることもあります。

このとき管理職がやるべきは:

  • 業務上の正当性に立脚して説明する
  • 問題の主語を“感情”から“業務目的”に戻す
  • それでも納得しない場合は、人事を交えて対話の場を移す

上司は“気分の調整役”ではありません。業務基準に基づいて必要な行動を促す存在であることを、構造的に貫くべきです。


8. 「全員を救う」は幻想──見極めと評価を恐れない

すべての部下が期待通りに成長するとは限りません。 どれだけ支援しても、指摘しても、変化が見られない場合は、「適性がない」と判断し、評価を下げる必要があります。

これは冷たさではなく、組織を守るための正当な責任行使です。

  • 成長の可能性があるのに放置すること
  • 明らかに向いていない人を抱え続けること

どちらも組織にとって損失です。

管理職には、育てることと見切ることの両方を行う覚悟が求められます。


9. まとめ──芯のある理性が、職場を支える

管理職は、「優しい人」でも「怖い人」でもなく、組織を前に進める“理性的な判断者”であるべきです。

最後にポイントを整理します:

  • 部下を接待する必要はない
  • 機嫌ではなく目的で話す、職務に基づいた対話と指導を行う
  • 会社に必要なことを正しく伝え、会社の立場で正しく見極める

部下との関係性に悩むときほど、管理職自身が「職務に立ち返る」ことが、最大の答えになるのです。

「なぜ、若手を立てなきゃいけないの?」 上司の叱りたい欲求はどう処理すべきか | PHPオンライン|PHP研究所