

2:6:2の法則で組織のバランスを最適化する方法
下位2割を無理に動かすな!
組織を動かすうえで、「2:6:2の法則」という考え方がある。
これは、「どんな組織でも、優秀な2割・普通の6割・成果を出せない2割に分かれる」というものだ。
旭酒造の桜井博志会長は、この法則を実践に落とし込み、組織を成長させてきた経営者だ。
彼は言う。
「下位2割は放っておけばいい。動かない人たちを無理に動かす手間と時間は、無駄でしかない」と。
この言葉に私は強い説得力を感じた。
組織には、必ず「動かない層」が生まれる。それは“サボっている”のではなく“存在する意味がある”のだ。
下位2割は「無駄」ではなく「組織の余白」
動かない2割を「問題」と考えるリーダーは多い。
だが、実はその2割こそが、組織のリズムと安定を守っている可能性がある。
生物学にも「働きアリの法則」がある。
働きアリの群れを観察すると、
- 常に2割はよく働き
- 6割はそこそこ働き
- 2割はほとんど働かない
ところが、この2割を取り除くと、次に「働いていたアリ」の中からまた2割が働かなくなる、という現象が起きる。
つまり、「動かない存在」は集団のサステナビリティ(持続性)を保つために自然発生しているのだ。
人間の組織でもこれは同じだと考えていい。
全員が全力で走り続ける組織は、持続しない。
疲弊し、潰れてしまう。
だからこそ、緩急を生み出す下位2割は、組織にとっての「余白」や「予備戦力」として必要なのだ。
トップが見るべきは「上位2割」だけ
リーダーの役割は何か?
それは、組織の旗を掲げ、進むべき方向を示すことである。
そして、旗に感応するのは、上位2割の人材だ。
彼らはビジョンに共鳴し、自ら動く力を持っている。
だからこそ、トップはこの層をしっかりと見極め、直接導くべきだ。
上位2割が組織のエンジンであり、彼らが中位6割を動かす存在になる。
逆に、下位2割に目を奪われてはならない。
時間と労力をそこに使えば、組織は停滞する。
つまり、「この指止まれ」と旗を掲げ、挙手する人間を信じ、共に走る。
これが、桜井会長の実践するリーダーシップだ。
下位2割への「期待しない」という胆力
下位2割は動かさなくていい――だがしかし、組織に害を与えさせてもいけない。
ここで大事なのは、「最低限の秩序を守らせること」である。
具体的には、
- 周囲のモチベーションを下げない
- 組織のルールや文化を乱さない
- 協調性や最低限の業務を遂行する
このラインを守る限り、過度なプレッシャーは不要だ。
動かないなら動かないなりに、「そこにいることで組織を安定させる役割」を担わせる。
処遇は「明確な差」をつける
さて、最も重要なのは、待遇や評価における「明確な差」を設けることだ。
この差が曖昧だと、中位6割と上位2割のモチベーションが崩れる。
上位2割ー
- 明確な評価と報酬
- 裁量と権限
- 成長機会とチャレンジの場を与える
中位6割ー
- 貢献度に応じた公正な評価
- モチベーションを維持できる環境設計
- 上位2割からのサポートや導線を確保
下位2割ー
- 最低限の安定を保障
- 昇進や高報酬は原則期待させない
- 無理に引き上げず、秩序を守ることに重きを置く
これにより、「頑張った者が報われる」という公平感が組織全体に浸透する。
公平感を失った瞬間、努力は止まり、組織の推進力は消えてしまう。
だからこそ、処遇差の設計はリーダーの最も重要な任務だ。
2:6:2の法則を理解すれば、組織運営は驚くほど楽になる
2:6:2の法則は、単なる理論ではなく、現実の組織で確かに起こっている現象だ。
旭酒造の桜井会長は、それを見極め、下位2割を無理に動かさず、上位2割と中位6割の力を最大化することで、195億円の売上を1000億円へと拡大しようとしている。
このマネジメントは、特別な才能ではなく、
- 構造を正しく理解し
- 役割と処遇を設計し
- 胆力を持ってブレずに実行する
つまりは、これだけの話だ。
まとめ
結果的に、組織は「全員を動かす」ものではない。
動くべき人が動き、残りは役割を果たす。
そして、公平感を守り、秩序を維持する。
これを実現することで、組織は無理なく回り続ける。
「2:6:2の法則」は、その道しるべになる。
下位2割を無理に動かすのではなく、存在を受け入れ、役割と処遇を明確にすること。
それが、現代のリーダーに求められる胆力である。
「部下を味方にできるリーダー」と「孤立するリーダー」の決定的な違い | News&Analysis | ダイヤモンド・オンライン