Z世代は配属ガチャにさらば?

配属ガチャからの脱却:「やりたいこと」が人材と組織を強くする採用戦略とは?(2025.4.4)

「やりたいこと」を活かす採用の、その先へ

■ はじめに:配属ガチャの終焉は始まっている

近年、「配属ガチャ」という言葉が就活生や若手社員の間で広がっています。自分の希望とは異なる部署に配属されることで、キャリアのスタート時点で大きなミスマッチが生まれ、モチベーション低下や早期離職につながってしまう問題です。

そんな中、住友商事が導入した「WILL選考」は注目を集めました。採用時に配属先を確約するこの制度は、長らく続いてきた日本型総合職制度に対する明確なアンチテーゼでもあります。

このコラムでは、WILL選考のような「配属先確約型採用」の意義や課題、中小企業が取り組む際の現実解、そして“やりたいこと”を起点とした人材活用戦略について、7つの観点から詳しく掘り下げていきます。


■ 1. 総合職制度の限界と“配属ガチャ”の弊害

日本の総合職制度は、長期雇用や年功序列を前提とし、「会社に入ればどんな仕事でもやってもらう」という暗黙の合意の下に成立してきました。
しかし、現代ではこの仕組みが多くの若者の価値観と乖離しています。

❌ 配属ガチャがもたらす問題点

  • 本人の関心や専門性が活かされない
  • モチベーション低下、早期離職の原因に
  • 配属先での業務がキャリアに結びつかず、成長実感が薄れる

「会社が適性を見て決める」という建前は、もはや通用しません。Z世代以降は、自分のキャリアビジョンを持ち、そこに納得できなければすぐに別の選択肢を探す世代です。


■ 2. 「やりたいこと」は人材活用の潤滑油であり、推進力

一部には、「やりたいことを優先するのはわがままだ」という見方もあります。しかし、それは誤解です。

✅ 「やりたいこと」は単なる自己主張ではない

  • それまでの学びや経験の集積であり、自信の裏付けがある
  • モチベーションを喚起し、能動性を引き出す
  • 創意工夫と自走力につながる
  • 「やりたいことをやるために、やりたくないことにも取り組む」姿勢が生まれる

つまり、「やりたいこと」は、本人の能力を最大限に引き出すスイッチであり、組織にとっては最も自然な人材活用の起点なのです。


■ 3. 「やりたいことしかやらない」は、わがままに過ぎない

とはいえ、誤解を避けるために明確にしておくべき点があります。

**「やりたいことをやりたい」**という前向きな意志と、
「やりたいこと“しか”やらない」という自己中心的な態度は全くの別物です。

前者は組織への貢献につながる一方で、後者は協調性や責任感に欠け、単なるわがままとして評価されるべきではありません。
重要なのは、自分の意志を尊重しつつも、組織とのバランスを取れる柔軟さです。


■ 4. 配属先確約型採用は、企業にとっても“覚悟”が問われる

WILL選考のような制度は、企業にとっても単なるパフォーマンスでは成り立ちません。
導入には、次のような高いハードルがあります。

📌 配属先確約型採用が企業に求めるもの

  • 採用時点での業務と人材の精緻なマッチング
  • 各部署が必要とするスキル・人材像の明確化
  • 事業戦略と人事戦略の連動
  • 部門責任者の面接・判断参加

要は、採用戦略そのものを「本気で設計する必要がある」ということです。

大企業だからこそ対応できている面もありますが、これは「本質的な採用力」があるかどうかを示す試金石でもあるのです。


■ 5. 中小企業はどう対応すべきか?現実的アプローチとは

大企業と違って、制度もリソースも限られた中小企業には、配属先確約型の採用は難しいという現実があります。しかし、全てが無理というわけではありません。

🔍 中小企業こそ意識すべき採用の視点

  • ゼネラリスト前提ではなく「明確な職種採用」へ
  • 「やりたいこと」と「できること」のすり合わせを丁寧に
  • 即戦力より「今すぐ活かせる経験・スキル」を重視
  • 副業経験者・専門職・転職組の活用

中小企業は採用数が少ない分、一人の適性が成果に直結するため、逆に言えば“丁寧なマッチング”が可能です。


■ 6. ゼネラリスト的視野は「後から育てるもの」

中小企業ではどうしても「一人あたりの担当領域が広い」ため、最終的にはゼネラリスト的な感覚が必要になります。

しかし、それは入社時に求めるべきものではなく、信頼関係と成果を重ねた後に自然と広がるべきものです。

📈 中小企業における段階的ゼネラリスト化の流れ

  1. フェーズ1:得意領域で成果を出す
  2. フェーズ2:周辺業務への関心・理解を育む
  3. フェーズ3:横断的な視点で行動できる裁量を与える

こうした流れを組めば、多能工的な人材も自然に育ち、本人も納得感を持って役割を広げていくことができます。


■ 7. やりたいこと×成果=正当な評価が不可欠

一つだけ忘れてはいけないのは、「やりたいことをやらせているのだから当然だろう」という企業側の態度は、モチベーションを削ぐということです。

成果を出しているのであれば、それが「やりたいこと」だったとしても、正当な評価・報酬・ポジションが与えられるべきです。

モチベーションはカンフル剤です。永続的なエネルギー源ではありません。
だからこそ、制度・待遇・評価の仕組みでその熱を持続させる環境設計が必要なのです。


■ まとめ:「やりたいこと」から始まる人材戦略の再設計を

配属先確約型採用は、日本の旧来の人材活用の常識を大きく揺るがすものです。しかし、それは大企業だけの話ではありません。

中小企業こそ、人材一人ひとりの力を丁寧に引き出すことで、驚くような競争力を発揮できる可能性があるのです。

重要なのは、

  • やりたいことと会社の方向性をすり合わせ、
  • 得意なことを起点に力を発揮してもらい、
  • 徐々に視野や役割を広げ、
  • 成果に対してはしっかり報いる。

この基本的な流れを大切にすることで、配属ガチャのない、個人も組織も納得できる雇用のあり方が実現できるでしょう。

Z世代は「配属ガチャ」にさらば?住友商事も採用時に配属先確約で入社 丸紅やKDDIも導入済み | 概要 | AERA DIGITAL(アエラデジタル)

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