いまどきの新入社員は「お酒の席」をなぜ嫌がるのか?

「飲み会文化」が企業を滅ぼす?若手離れと職場改革の本質を問う(2025.4.3)

「飲み会文化」が企業を滅ぼす?

若手離れと職場改革の本質を問う


1. 「飲み会も仕事のうち」は、もはや通用しない

長らく日本の職場文化では、「飲み会」が仕事の延長として重視されてきました。
しかし、現代ではこの価値観に対して、若手社員を中心に強い拒否反応が広がっています。

「飲み会も仕事のうち」ではなく、「仕事は仕事、私生活は私生活」という考え方がスタンダードになりつつあるのです。

背景には、以下のような変化があります:

  • 働き方改革やリモートワーク普及による“私生活の尊重”志向
  • ソバーキュリアス(あえて飲まないライフスタイル)の台頭
  • ハラスメント(アルハラ・パワハラ)への社会的関心の高まり
  • 若手人材の「空気を読む」文化への警戒感

かつての“飲みニケーション”が信頼構築や評価に大きな影響を与えていた時代は、終わりを迎えつつあります。


2. なぜ飲み会を嫌がるのか?若手の本音

飲み会を避ける理由は「単なるお酒嫌い」ではない

現代の若者が飲み会を敬遠するのは、単にお酒が苦手だからという理由ではありません。

根本には「職場の文化や評価が、業務外にまで及ぶこと」への強い違和感があります。

以下は代表的な拒否理由です:

  • 酒が飲めないのに会費は一律(不公平感)
  • 仕事終わりの時間まで拘束される(時間的負担)
  • 酔った上司の本音や暴言に傷ついた経験(心理的負担)
  • 断りづらい雰囲気(事実上の強制)
  • プライベートの時間や趣味(推し活)を優先したい(価値観の変化)

多くの若者にとって、職場は“プロとして仕事をする場所”であって、“所属を確認し合う共同体”ではないのです。


3. 日本企業が飲み会に依存してきた構造

日本的な組織文化には、以下のような構造的な背景があります。

■ 「和を以て貴しとなす」の精神

  • 「輪を乱さない」「調和を大切にする」という価値観が根底にある
  • その延長で、「飲み会で一体感を得る」文化が根付いた

■ 年功序列と終身雇用の影響

  • 長く働くほど“家族的”な関係性を求める傾向があった
  • 「苦楽を共にする」という感覚が評価や昇進に影響することも

■ 飲み会でしか本音が言えないという幻想

  • 「飲まないと話せない」こと自体が、日常の職場コミュニケーションの未成熟を物語っていた

4. 社会はすでに変化している

近年、飲み会文化そのものが急速に見直されています。

● ソバーキュリアスという価値観の浸透

  • あえて飲まない、飲めるけど控える人が増加
  • 健康・メンタル・時間管理を重視するライフスタイル
  • 若者だけでなく、上司世代にも広がりつつある

● 飲み会に代わる交流方法の模索

  • ノンアル飲み会の導入
  • ランチ会やボードゲーム大会、オンライン座談会
  • 「業務時間内」に完結する交流イベント

“飲むこと”が前提ではない形での関係構築が、少しずつ企業に浸透してきています。


5. 強制される飲み会は労働時間か?

実は「飲み会」が事実上の業務である場合、労働基準法に抵触する可能性もあります。

● 裁判例から見るリスク

  • 過去には、会社主催の飲み会後の事故が「業務災害」として労災認定された事例も
  • 上司の強い誘導・事実上の参加強制・会社負担の会費などが認定要素になりうる

● 曖昧な“自由参加”の危うさ

  • 「強制ではない」と言いながら、評価や関係性に影響する構造がある場合、
     それは“黙示の業務命令”に近いとみなされる可能性もある

企業は“自由参加”を建前で終わらせず、制度的・文化的にも線引きの明確化が求められます。


6. 飲み会文化を温存する企業の未来

ここが最も重要なポイントです。

「飲み会=組織の和」という旧来の構図を手放せない企業は、今後深刻なダメージを受けていきます。

● なぜなら…

  • 優秀な人材ほど離れる
  • 社内が同質的で内向きになる
  • 新しい発想・創造性が入ってこない
  • ハラスメントリスクが高まる
  • 外から見て“時代遅れの企業”と認識される

これは企業にとって、競争力の喪失採用難、離職率上昇といった、致命的な問題を引き起こします。


7. これからの「絆」と「信頼」のつくり方

信頼は、酒の場ではなく「日常の仕事の中」で築かれるべきものです。

以下が、新時代における組織のあるべき姿です:

  • 信頼の源泉は成果と誠実さ
  • チームワークは目的と役割の共有から生まれる
  • 飲み会に参加する/しないが人間関係に影響しない風土
  • 個人の時間を侵食せず、尊重する文化

つまり、「距離があるからこそ生まれる信頼」こそが、プロフェッショナルな関係なのです。


8. 飲み会文化からの脱却が、企業の生き残り条件に

変化に対応できる企業だけが、生き残れる時代です。

飲み会文化の見直しは、その象徴的な一歩に過ぎません。

企業がこれから本当に取り組むべきことは:

  • 働き方の価値観の多様性を受け入れる
  • 「付き合いの良さ」ではなく「成果」と「人間性」で評価する
  • 時間、体質、趣味、信条など“違い”を許容できる風土を持つ

これらの土台を持つ企業こそが、若手に選ばれ、信頼され、長く続いていく組織となります。


✅まとめ:飲み会をやめることが、組織の信頼を育てる

  • 「飲み会がないと信頼が築けない」は時代錯誤
  • 酒を通じた絆は幻想であり、本質は仕事の中にある
  • 若者は見抜いている:「酒に逃げる組織は信用できない」
  • 組織に求められるのは、“断っても信頼される”文化
  • 飲み会文化の見直しこそ、組織改革の第一歩

時代が変われば、絆の築き方も変わる。
そして、それに対応できるかどうかが、企業の未来を決めるのです。

「花見や飲み会なんて参加したくない!!」 いまどきの新入社員は「お酒の席」をなぜ嫌がるのか? 20代は「飲まない派」が増加、”ノンアル飲み会”も | リーダーシップ・教養・資格・スキル | 東洋経済オンライン

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