どんなに有能でも

定時退社する人は出世できないのか?日本企業の評価制度に潜む思考停止の構造(2025.4.10)

定時退社する人は出世できないのか?

日本企業の評価制度に潜む思考停止の構造


はじめに:まだこんな時代錯誤が記事になるのか?

「定時で帰る人は出世しにくい」
こんなフレーズを、現役の“エリートメガバンク行員”が書き、それをメディアが堂々と記事にする。

これは笑い話ではなく、日本企業の根深い“構造的な問題”をあらわにしている。
本記事ではこの考え方に真っ向から異を唱え、「評価とは何か」「働くとは何か」を問い直したい。


1. 定時退社=出世できないは“評価の不在”を意味する

まず押さえておきたいのは、評価とは「同じ条件下で競うこと」によって成り立つという大前提だ。

  • 同じ業務時間で
  • 同じ職責のもと
  • 同じリソースを用いて

この条件でこそ、成果の違いが「能力」として浮かび上がる。

定時退社する社員と、毎日2時間残業する社員を並べて“結果”だけで比較するのは公平ではない。
これはまさに、サッカーで90分と100分の試合時間で得点数を比べているようなものだ。

同じ土俵で評価されなければ、公平な競争など存在しない。


2. 長時間労働を「美徳」とする価値観がもたらした歪み

日本企業には、「長く働くことが偉い」という根深い文化がある。

その背景にあるのは以下のような価値観だ:

  • 時間をかけた仕事=頑張っている
  • 上司との雑談も“勤務のうち”
  • 残っている人は頼りにされやすい
  • 会議に多く出席している人は貢献している

これらはどれも“成果ではなく、姿勢や印象で評価する”文化である。
これは、企業が「明確な評価軸を持っていない」証拠でもある。


3. 「勢いで何とかなる時代」はもう終わった

戦後復興期、高度経済成長期、バブル期、日本には“勢い”があった。

  • 多少評価が曖昧でも組織全体が伸びていた
  • 効率が悪くても売上が上がった
  • 無駄があっても会社が潰れることはなかった

しかし今は違う。
成長は鈍化し、競争は激化し、人口は減り、コストは上がり、リソースは限られている。
もはや「勢い」ではカバーできないのだ。

この状況下で、なおも「頑張っている風の人」を評価するような文化は、
結局のところ自らの首を絞めるような愚行である。


4. メガバンクをはじめとする大企業の“思考停止”構造

今回のような価値観が出てくる背景には、大企業に蔓延する思考停止構造がある。

特に日本のメガバンクに見られる傾向:

  • 年功序列と序列意識
  • 成果の見えにくい業務構造
  • 効率よりも安定を優先するカルチャー
  • 「前例踏襲」が重視される風土

結果として、「残っている」「呼ばれたらすぐ動ける」「上司と接点が多い」という
“使いやすさ”が評価にすり替わる

だが、これは評価ではない。ただの“都合の良い駒”として扱われているにすぎない。


5. 人員削減・効率化が進む中での矛盾

メガバンクは2017年以降、数万人規模の人員削減を発表してきた。

  • 三菱UFJ:10,000人相当
  • みずほ:19,000人規模
  • 三井住友:4,000人以上

これらはすべて「収益性の悪化」「業務効率化」「デジタル化推進」によるものだ。

それにもかかわらず、未だに“長く会社にいる人間を評価する”文化を肯定するのは、
完全な経営思想と現場文化のねじれである。


6. 評価制度の問題は、経営そのものの問題

この問題は単なる「人事評価のミス」ではない。
経営の本質的な失敗である。

  • 成果とは何かを定義できていない
  • 評価指標が時間や印象に偏っている
  • 評価者が育っていない
  • 数値と感情の混在した評価基準

これでは優秀な人材が離れ、組織の生産性は下がり、再生のチャンスすら失われる。


7. 新時代に求められる「評価の原則」

これからの時代に必要な評価制度とは何か?
以下のポイントが基本になる:

✅ 新しい評価の原則

  • 時間ではなく成果で評価する
  • 業務範囲・リソース・就業時間を揃えて比較する
  • プロセスよりもアウトプットを重視する
  • 「姿勢」ではなく「実績」に基づく昇進制度
  • 上司の“感覚評価”を制度的に排除する
  • フィードバックは可視化・定量化されるべき

これが実現できる企業こそが、これからの「生き残る組織」となる。


8. しがらみに縛られない新しい企業への期待

古い企業文化を守り続ける組織に、もはや未来はない。
頼るべきは、過去に縛られない柔軟な企業、新興勢力、変化を恐れない組織である。

期待されるのはこうした企業:

  • 社歴や学歴にこだわらず成果で評価する
  • ワークライフバランスと収益性を両立する
  • 管理職が常に学び、変化に対応している
  • 社員の自律性を尊重し、過剰な監視をしない

そういった企業こそ、これからの時代を牽引していく存在となるだろう。


9. メディアの責任:もう“古い働き方”を称えるな

最後に忘れてはならないのが、こうした価値観を“垂れ流している”メディアの責任だ。

  • 読者に寄り添うふりをして、思考停止を肯定する
  • 古い働き方を“リアル”として再生産する
  • 若者や改革派の足を引っ張る

こうしたメディアこそが「仕事ができない」存在である。

時代が変わった今こそ、メディアには新しい価値観を提示する責任がある。
安易な“エリート”礼賛や“残業信仰”に加担してはならない。


結論:今こそ評価制度を“設計”し直すとき

  • 定時退社する人間が不当に評価されない組織へ
  • 限られた時間で成果を出す人材が真に報われる組織へ
  • 働く時間ではなく、価値で競う時代へ

そして何より、「古い価値観を当然とする人間」が出世する社会ではなく、
“変化を自覚し、思考し、構造を変えようとする人間”がリーダーとなる社会へと舵を切らなければならない。

評価制度とは、企業の哲学そのものである。
未来を選ぶのは、働く一人ひとり、そしてそれを支える仕組みである。


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