優秀な人材にこそリソースを集中せよ|日本型“逆配分”の構造(2025.7.7)

■ なぜ優秀な人材が潰れていくのか?

「働き方改革」や「人的資本経営」といったキーワードが叫ばれる中でも、現場の実態はまるで逆行している。成果を出す人ほど負担を背負わされ、リターンは平均化。周囲との“平等”を優先するあまり、努力や能力が報われない組織構造が、静かに人材を潰し続けている。

これは霞が関に代表される官僚機構だけの話ではない。むしろ、それは「日本全体の組織に蔓延している病理」なのだ。

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■ 霞が関に見る「エリート潰し」の構造

たとえば、国家公務員総合職。最難関の試験を突破し、志を持って入省した若手官僚たちは、次のような環境に置かれる。

  • 深夜の国会待機
  • 月80時間を超える残業
  • 土日祝の呼び出し
  • 常時プレッシャー下での政策作成
  • 評価は横並び、昇進は年功

結果として、心身を壊し、辞めていく──。政府の統計でも、総合職の5人に1人が10年以内に離職している。国家公務員総合職という、常人では太刀打ちできないほどの能力を持った人材が、無為に使い潰されているのだ。彼らに環境を適切な環境を与えることができれば、破壊的な仕事をできるにも関わらず。

これは特殊事例ではない。むしろ霞が関のみならず、日本全体の象徴である。


■ 民間企業でも同じことが起きている

霞が関だけではなく、民間でも、同じ構造が目立つ。

  • 成果を上げても昇給せず、「横並び」で処遇される
  • 仕事ができる人に業務が集中し、他者は責任回避
  • 年次や在籍年数が評価基準となり、若手の抜擢が起きにくい

この構造が長年続いた結果、日本全体が「頑張る人がバカを見る」環境になってしまっている。


■ 本来の組織は「利益を生む人材」に投資する仕組みであるべき

ここで一つの例えが有効だ。航空機の座席構造である。

【航空機と組織の対応構造】

クラス航空業界での役割組織における役割投資・対応方針
ファーストクラス利益の柱圧倒的成果を出す中核人材最大限の裁量・報酬・部下
ビジネスクラス安定収益源安定した成果を出す層適切な育成・支援
エコノミークラス損益トントンの土台一般実務を支える層維持的支援・定型管理

航空会社は、誰にどのようなサービスを提供するかを明示的に設計している。差別ではなく、ビジネスとしての最適設計である。

これを組織に応用すれば、成果を出す人材にリソースを集中するのは当然の戦略だ。


■ 平等の幻想が組織を腐らせる

日本社会では、「平等」であることが美徳とされすぎている。だがその“平等”は、実は幻想にすぎない。

「間違った平等」がもたらす弊害

  • 成果に対する報酬が希薄化する
  • 有能な人材のモチベーションが低下
  • 実力のない人材が居座り、組織の代謝が止まる
  • 若手が「抜擢されない社会」に絶望して流出

この結果、組織全体が「ぬるま湯の空気」に包まれ、競争も挑戦も起きない場へと変質する。


■ クラス制の導入は「差別」ではなく「合理」

ここで誤解してはならないのは、クラス分け=人間の序列ではないということだ。

クラス制と階級制の違い

項目階級制(封建的)クラス制(現代的)
移動の可否不可(生まれで決まる)可(実力と成果で変動)
評価基準血筋・在籍年数能力・実績・貢献度
モチベーション諦め・従属挑戦・成長
組織の構造固定・硬直動的・柔軟

つまり、重要なのは「クラス間の流動性」である。


■ 人は交換可能な部品ではない──だが、“永遠の下っ端”は許されない

よく出てくる反論に「下っ端は部品か」という声がある。しかし、ここでの前提は違う。

  • 誰もが最初はエコノミーから始まる
  • だが、努力・成長・成果によってビジネスクラスにも、ファーストクラスにも行ける
  • 逆に、努力しない者が居座ることを正当化してはならない

つまり、人間は部品ではないが、適正な“選別”は必要なのだ。


■ クラス制がもたらす“正しい競争”とは?

クラス制を導入すると、次のようなポジティブな循環が生まれる。

クラス制導入の効果

  • 目標が明確化:「どうなれば昇格できるか」が見える
  • 公正な評価:「何を見て評価されるのか」が可視化される
  • 健全な競争:「足を引っ張る競争」ではなく、「成果で勝負する競争」が主流になる
  • 若手の抜擢:成果主義が浸透すれば、若年層の上位進出も可能に

組織が成長するのは、「誰が上か」ではなく、「どうすれば上がれるか」が見える環境があるときだ。


■ 組織の役割は“仕組みそのもの”を整備すること

優秀な人材に業務を集めるだけでは、やがてその人は潰れる。

“できる人に業務が集中する”のではなく、“できる人が仕組みごと再設計できる”ような体制こそ理想である。

優秀な人材とは、チームの成果を最大化できる人であり、彼らが機能するためには、仕組みを整備する側の意思と設計思想が不可欠である。

組織の本質的な役割は、「人を働かせること」ではなく、「人が成果を出しやすい環境を設計すること」にある。


■ リソース配分の再設計が、社会と経済を蘇らせる

霞が関で優秀な官僚が潰れていくのは、国家レベルの逆配分の象徴にすぎない。この構造が放置されれば、企業も官庁も、教育現場も、すべてが「平等の名の下に沈む」社会になる。

誰に投資するべきか?
誰に裁量と責任を与えるべきか?
それを判断できる組織が、未来を握る。


■ 結論:公平ではなく、最適な“偏り”を設計せよ

組織が強くなる条件は、「全員に同じものを配ること」ではない。成果を出す人材に、見合う環境と報酬を与えること。それは差別ではなく、“戦略”であり、“尊重”であり、“敬意”のかたちである。

そして、

  • 下の人間にも上を目指すチャンスがあること
  • 上の人間にも降格の覚悟があること

──この双方向の流動性が担保されている限り、クラス制は健全に機能する。

優秀な人材にリソースを集中せよ。
それは冷たい合理ではなく、組織と社会を生かす最善の処方箋だ。


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