なぜ日本企業は才能を潰すのか?「使えない東大生」という評価が示す組織の限界(2025.4.14)

なぜ日本企業は才能を潰すのか?

「使えない東大生」という評価が示す組織の限界


■ 東大生は本当に「使えない」のか?

近年、「東大生は仕事ができない」「東大までの人だった」という評価を耳にする機会が増えた。
しかし、こうした言説は果たして的を射ているのだろうか?

東京大学に入学・卒業するということは、日本で最も難関な試験を突破したことを意味する。
その過程で求められるのは:

  • 極めて高い論理的思考力
  • 優れた問題解決力
  • 自己管理能力と継続的な努力
  • 学習計画と戦略構築力

こうしたスキルは、まさに企業が求める“地頭”そのものである。

にもかかわらず、「使えない」というのは、企業がそれを活かす力を持っていないだけではないか?
そこに日本企業の“本質的な課題”がある。


■ 本当の問題は「人事力の欠如」

東大生が“使えない”のではない。
使いこなせない企業側、つまり人事部の設計力と柔軟性の欠如こそが最大の問題だ。

日本企業の多くでは、採用基準が以下のような「扱いやすさ重視」に傾いている:

  • 空気が読める
  • 指示に従順
  • 和を乱さない
  • 無難にこなす

こうした基準では、「尖った才能」や「異質な思考」を持つ人材は排除される対象となる。

たとえ明治大学出身であろうと、自己主張が強かったり独自の視点を持っていた場合、「扱いづらい」として同じ扱いを受けるだろう。
東大生だからではない。理解できない人材を受け入れられない“器の問題”なのである。


■ 同じような人材、同じような仕事、同じような結末

こうした企業は、結果として以下のような行動パターンを繰り返す:

  • これまでと同じような人材ばかりを採用し
  • これまでと同じような仕事しか与えず
  • これまでと同じようなプロセスで評価を下す

当然、イノベーションは起きない。
組織の内側からは、何も変わらない。

「変わらないことが安心」とされる企業文化は、世界が変わり続ける今の時代には致命的である。


■ 米国・中国との決定的な違い

アメリカや中国では、「尖った才能を伸ばす」という文化と仕組みが組織の中に根付いている。

たとえば:

  • Google(ラリー・ペイジ、セルゲイ・ブリン)
    独自の検索アルゴリズムを評価し、企業全体で支援。
  • Facebook(マーク・ザッカーバーグ)
    ハーバード在学中のアイデアをベースに、世界最大のSNSを構築。
  • Tesla(イーロン・マスク)
    実現不可能と言われた電気自動車・宇宙開発を次々と現実に。
  • 中国の“千人計画”
    世界中から才能を集め、AIや半導体の技術開発を国家戦略として推進。

彼らの共通点は「扱いやすさ」ではなく、突出した発想・集中力・実行力を最大限活かすために、組織の側が変わっていることである。


■ なぜ日本からは世界を変える発想が出ないのか?

日本には能力のある人材は山ほどいる。
しかし、その才能を活かす構造・文化・組織が存在しない

  • 「出る杭は打たれる」
  • 「空気を読む」
  • 「上司の指示に従うのが正しい」

このような価値観の中では、人材の評価軸が「従順さ」「協調性」「無難さ」に偏ってしまう
当然、独自の発想や異端の行動は“危険分子”と見なされ、潰される。

結果、日本社会全体が「平均点主義」「前例主義」へと傾斜し続け、30年にわたる経済停滞を自ら招いてしまった。


■ 変革に必要なのは「才能を活かす人事設計」

本来、人事の役割は「扱いやすい人材を揃えること」ではない。

人事に求められる本質的な機能とは:

  • 才能を発見し
  • 適切に配置し
  • 活かす仕組みを整えること

つまり、“素材”を選ぶのではなく、“素材をどう調理するか”の勝負である。

「東大までの人」などというラベリングは、企業側の設計力不足を隠すための方便にすぎない。


■ 組織の“受け皿”が日本企業の未来を決める

東大生であろうが明大生であろうが、問題は学歴ではない。
問題なのは:

  • 「異質な存在を活かす柔軟性」が企業側にあるか?
  • 「わからないものを排除する」のではなく、「共に学び、育てる姿勢」を持てるか?

これがあるかどうかで、企業の将来は大きく分かれる。

才能を恐れる企業は、いずれ才能に見放される。
そして、それがイノベーションを失った国の末路である。


■ まとめ:今、日本企業が問われていること

最後に、本記事で伝えたかった本質を整理しよう。


✅ 日本企業が抱える本質的な問題点

  • 高い能力を持つ人材を「使えない」と断じてしまう
  • 「扱いやすさ」や「空気を読む力」が過剰に重視される
  • 異質な人材を受け入れられない組織文化が根深い

✅ その結果、起きたこと

  • 同質な人材ばかりが集まり、変化や革新が起きにくくなる
  • 新しい価値を創ることよりも、過去の再生産が続く
  • 米中にイノベーションで圧倒され、日本は経済停滞に突入

✅ 今求められる視点

  • 「才能を活かす設計」ができる人事の力
  • 異端を排除するのではなく、活かす組織文化
  • そして、尖った人材と共に組織そのものを変えていく柔軟性

🔚 結びに

「東大生は使えない」と言う前に、企業自身が自問すべきだ。
“使える器”になれているのか?
“異質”を活かせず“無難”ばかりを選ぶ組織に、未来はない。

世界を変える人材は、日本にも必ずいる。
問題は、その才能に向き合い、育てられるだけの「覚悟」が、企業側にあるかどうかである。

なぜ「使えない東大生」が職場で生まれるのか 上位0.3%の成績優秀者より “明大の飲食経験者”が求められる現実 | デイリー新潮

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