現代に求められるのは『悟空型マネジメント』だ(2025.11.7)

序章|「オレの背中を見ろ」は、もう届かない

Z世代は、年代の離れた上司や先輩が言う「俺の背中を見てついてこい」という言葉に、ほとんど心を動かさない。今回の記事でも指摘されていたように、Z世代は「同年代に比べて自分がどのくらい成長しているか」を最も重視する。つまり、縦の関係ではなく、横の基準で自分を測る世代である。
だから、上司がどれだけすごいかは、彼らにとっては重要ではない。むしろ「上司と自分の間にある世代の差・経験の差」は、多くの場合、比較不能として処理される。そのため、

  • 「俺がやってきたようにやれ」
  • 「昔はこうだった」
  • 「気合いで乗り越えろ」

といった、いわゆる昭和型の育成は、彼らにとっては「なぜそれをやるのか意味がわからないもの」になってしまう。
記事で言及されていた指摘は、それを端的に表している。

「上司は自分を“機械的な機能”だと考えて接する方がいい」

つまり、上司は「人格」や「カリスマ」や「背中」ではなく、評価の基準・役割の明確化・フィードバックの設計といった“仕組みそのもの”として機能する必要がある、ということだ。

そしてもう一つ重要なのが、

「精神論ではなく、何が加点で、何が減点なのか、具体的にこまめにフィードバックすること」

これは、Z世代が「空気」や「印象」ではなく、明確に言語化されたプロセスを求めているということだ。そのプロセスがない状態では、彼らは動かない。いや、正確に言えば、動かないことが合理的なのだ。

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第1章|ドラゴンボールに見る「育成の二つの型」

鳥山明作『ドラゴンボール』はご存じのとおり、週刊少年ジャンプで連載されていた作品で、日本のみならず現代でも世界中で愛読されており、現在でもその続編や、映画等が公開されている。バンダイナムコの世界IP別売上高においても、連載終了後30年超が経過したにも関わらず、近年でも1位を獲得し続けているコンテンツだ。
主人公は孫悟空。その息子の孫悟飯や、親友のクリリン、ベジータ、ピッコロなどと共に、強力な敵に立ち向かうストーリーだ。

この『ドラゴンボール』で、現代マネジメントの考察を試みてみよう。
悟空の息子、孫悟飯を育てた二人の人物がいる。ピッコロ悟空である。どちらも悟飯を戦力に育て上げたが、育て方はまったく違っていた。この対比は、そのまま昭和型の育成現代型の育成の分岐に重なる。

まず、ピッコロ。強力な敵(ベジータ)に対するために、彼は悟飯を“荒野に放り込む”ことから教育を始めた。恐怖、飢え、孤独、危険。それらをあえて与え、「生き残った者は強くなる」という価値観に基づくやり方だ。

つまり、強さは、試練によって“選別される”という考え方である。これは昭和〜平成の日本企業で一般的だった育成法そのものだ。

  • 現場で覚えろ
  • 失敗しても立ち上がれ(ただし立ち上がれなければ終わり)
  • 弱音は吐くな
  • ついてこれる者だけが前に進め

このやり方は確かに、一部の人間を圧倒的に強くする。悟飯は短期間で潜在能力を開花させ、突出した力を獲得した。しかし同時に、こうも言える。悟飯は「生き残れたから」花開いたのであって、裏には潰れた可能性も常にあった。
つまり、ピッコロ型育成はハイリスク・ハイリターン。天才や耐久力のある個は飛躍するが、大多数は折れる。人口も企業体力も「人が折れることを前提にできた」時代なら成り立ったが、令和では戦力が残らない育成法になりやすい。

ここで対照的なのが悟空である。誤解をされやすいが、悟空は「オレの背中を見ろ」タイプではない。
セル戦前、悟空は悟飯と共に超サイヤ人の“常態化”訓練を行った。要するに、高出力(ピーク)を平常運転に落とし込む設計だ。さらに悟空は自ら戦った後に退き、悟飯に任せるという戦略を採った。「自分が勝つ」ではなく「チームとして勝つ」ために、適材へのバトン渡しを行ったのだ。

悟空は「設計」と「役割分担」で強さの再現性を作った。
ここに、現代的育成の核心がある。


第2章|ピッコロ型育成=昭和的マネジメント

ピッコロ型育成のエッセンスを、現場の言葉に落とすと次のとおりだ。

ピッコロ型(昭和的)の特徴:

  • 選別:まず現場に放り込む。残れた者だけが適性者。
  • 属人:育成は指導者のカンと経験に依存する。
  • 沈黙:評価基準は明文化されず、空気を読む力が要求される。
  • 高負荷:失敗のコストが高く、心理的安全性は低い
  • 短期決戦:即戦力化を狙い、長期の底上げには不向き

この型は、戦場・競技・創業初期など「選別が前提」の局面では効果的だ。事実、悟飯のような先天的ポテンシャルを持つ人材は、この荒々しい環境で一気に跳ねることがある。
しかし、多くの組織においては、次の副作用が強く出る。

  • 離脱が増える(サイレント辞職/心が折れる)
  • 残った人材が均質化(多様性の損失)
  • 再現性がない(指導者と対象者の相性頼み)
  • ブラックボックス化(評価基準が見えず、納得感がない)

つまり、ピッコロ型は「一部のスーパーマンを作る」が、組織全体を強くしない。瞬発的な強さを生むが、持続的な組織成長には向きにくい。


第3章|悟空型育成=現代的マネジメント

一方の悟空型は、仕組みで強さを作る。セル戦に向けた超サイヤ人“常態化”は、平常性能(ベースライン)の再設計だ。これは、現代の組織が必要としている再現性のある育成と一致する。

悟空型(現代的)の特徴:

  • 底上げ:高出力を「平常」に落とし込み、疲弊せずに強い状態を作る。
  • 設計:強化の順序・負荷・回復を体系化する(ピーキング設計)。
  • 可視化評価指標・加点/減点を明文化する。
  • 配役:個性や状況に応じて役割分担とバトン渡しをする。
  • 権限移譲任せるが、見捨てない(自律と支援の両立)。

悟空は、自分が最強であり続けることよりも、チームが勝てることを優先した。だからこそ、自分が退いて悟飯に託すという意思決定ができたのである。

つまり、悟空型は「強い個」を作るのではなく、「強いチーム」を作るその上で特別な個性は自然に開花する。再現性のある底上げ型の育成であり、多様な人材が活きる土台をつくるのだ。


第4章|Z世代と「悟空型」が噛み合う理由

Z世代は、精神論では動かない。曖昧な上下関係や“空気”での統制は、最も信頼されない方法だ。彼らは、

  • 何をすれば加点か
  • 何をすれば減点か
  • なぜ今それをやるのか(目的)
  • どれくらいで到達できるのか(目安)

言語化されていることを求める。これはわがままではない。不確実性の大きい社会で、合理的にリスクを最小化しているだけである。
悟空型の育成は、この要件を満たしている。

  • 評価の地図がある(SSJ維持の基準・戦術の段取り)
  • 役割が明確(自分がどこまでやり、どこでバトンを渡すか)
  • 失敗の吸収設計(焦らせず、平常強度を上げる)

反対にピッコロ型は、Z世代にこう解釈される。

  • 理由が不明(なぜ荒野に置くのか)」
  • 評価が不透明(基準が見えない)」
  • 失敗コストが過大(折れたら終わり)」

Z世代は弱いのではない。合理的に動いているだけだ。だからこそ、悟空型の“設計された育成”が合う。


第5章|ピッコロ型 vs 悟空型の比較(現場実装の視点)

ここでは両者の型を構造的に整理し、組織がどちらを採用するべきかを明確にする。

比較表:ピッコロ型 vs 悟空型(現場実装の視点)

観点ピッコロ型(昭和的)悟空型(現代的)
育成の前提選別(耐えられた者が残る)底上げ(全員が戦える土台)
評価空気・印象基準の明文化・地図化
失敗の設計高コスト(折れたら終わり)低コスト(吸収して学習)
再現性低い(属人・相性依存)高い(仕組みで再現)
効果天才が跳ねる組織が強くなる(多様性が活きる)
向く局面戦場/競技/創業初期事業運営/人材育成/持続成長

第6章|我々は「橋渡し世代」である

ここで重要なのは、どちらが正しいかではない。時代の要請が違うという事実だ。昭和的な職場は、人が折れても補充できた。しかし今、離脱は簡単で、戻ってはこない。人口構造も採用市場も、“潰して選ぶ”余裕はない
我々、いま管理職を担う世代は、昭和的に育てられ、令和的に育てなければならないという橋渡し世代にいる。ここで必要なのは、

  • 自分の育てられ方を“再生産”しない勇気
  • 相手と時代に合わせて“更新”する柔軟さ
  • 主役の座を手放し、バトンを渡す決断

である。悟空は、自分が最強でい続けたい気持ちがあっても、セル戦で「勝つための配役」を優先し、悟飯に託した。この成熟こそ、いま求められている。


結章|悟空は「育てられ方」を更新した。次は、我々の番だ。

悟空は、自分が受けた育てられ方(放任・根性・自然との共存)を、そのまま悟飯に適用しなかった。相手の特性と時代の要請を読み取り、育成モデルを更新した。だから、悟飯は花開いた。

マネジメントとは、自分の体験を継承することではない。 相手が強くなる方法を、時代に合わせて選び直すことだ。

Z世代は弱くない。正確に時代に反応しているだけだ。だからマネジメント層は、再現性のある育成=悟空型に切り替える。背中ではなく、設計で導くべきだ。

人は、自分が受けてきた育てられ方に縛られる必要はない。時代は変わり、人も変わる。
だから育て方もまた、変わっていい。悟空はそうした。次は、我々の番だ。

Z世代へ、上司の向き合い方「精神論」「一体化を持とう」はNG 「システムに徹する」必要性(withnews